ハカランダのL-6 ていっても側板

 好きな前期型L-6についてのお話である。
ご存じの通り、1976年から79年までに製造されたL-6を前期型という。75年製造の個体はあるのかもしれないがごく僅かだと思う。見たことはない。というのは75年の年末に発表されたLシリーズだからと考える。
また1977年には仕様変更があり、それ以前を前期型の前期型、それから後は前期型の後期型と私は区分けしている。ただ大きな差違はなくパーフリングの違いや僅かなサウンドホールの位置の差程度。
いままでの人生で実物を見たり弾いたりしたL-6個体数は10程度だから、何百見たわけではなく、これからの話にはかたよりもあると思う。 上はハカ側板、下が普通のL−6
 前期型の仕様は裏板がバリサンドル(インドローズ)単板、側板はバリサンドル合板である。
76年のカタログには側板も単板と明記されていて(78年カタログでは側板合板)、L-6都市伝説となっている事は有名で、私も以前書いたが、単板と見まごう側板に出くわした経験はある。ただよく見ると微妙に木目模様にずれがあった(ので購入しなかった)。76年製か77年製の記憶がある。総単板のL-6は存在しないというのが私の今のところの主張だが、そんな夢の個体は存在するかもしれない、もしもそんな個体を手に入れたら報告したいものだ。無いだろうとする根拠はそれでは販売戦略上のL-6とL-8のグレイド差がつけられない事から。単なる誤植か?或いは割れ止めがないことを指摘する人もいる。
以前、確認の仕方は穴を開け断面を出すことと言ったが、エンドピンの穴の断面で確認できることに気づいた。最近のこと。
観察結果は、定石通りおおよそ2.5mm厚の合板と予測、大雑羽には表裏各0.4〜0.5mm厚程のバリサンドルが張られていると予測、心材は白い材である。メープルか何かっぽいが材質は不明である。パーフリング(1.3mm厚ほど)の下に見える。ちなみに裏板が単板であるのは確実で、79年製ので確認したことがある。
 ただ非破壊的な確認法はやはり音で判断すべきであろう。側板合板、側板単板の音の差には影響がないという人もいるようだが、そんなことはないと思っている。
おおかたの側板表は綺麗な柾目のバリサンドルであるが、内部から覗くと年代により差がある。77年製頃までは表も裏も差がない綺麗な柾目だが、79年製だと内側は板目に近い材が使われてる。
 上は普通のL−6、下がハカ側板
本題にはいるが、最近入手した78年製、シリアルは消えかかっていて間違えているかもしれないが81103かと読める。
前期型の後期型仕様である。
来たときに先ず感じたことはハカっぽい香りがぷんぷんするのである。以前持っていたL-10の側板ハカの香りに近い。
しかしその時点ではL-6側板はバリサンドル合板の頭しかないから、強いローズの香りと思っていた。
次に弦を張って弾いてみると、何だかおかしい音だ。L-6の音ではない、ローズの音ではない、1弦2弦の金属音と、低音はエッジが立ったズドンっぽい音がする。それこそ煌びやかな音。
ただこの時点でも表板は年輪がはっきりしたエゾマツだったので、その為だと思ってた。
 数日後、側板をよく観察するとバリサンドルに比べ赤みが強い、ただ柾目なのでローズっぽくも感じるが、木目はよくヘッドに張られたハカに近い気がする。
知り合いのエレキギター弾きが来たので、入手したばかりのギターだと、調弦して、Eをジャラーと弾くと、知り合いはびっくりした。低音のでかた、高音の音に「今までアコギを馬鹿にしていたが、考えを改めた」と。まあ本人まともなアコギを聴いたり弾いたした経験がないと私は思ったが。
私もその時点で側板はハカではないか疑い始めたので、1弦から4弦でのアルペジオを弾くと、やはりハカの音だ。
それもハカかニューハカ合板のL-5の音とは大きく隔たり(そりゃ合板ギターだし)、ハカ単板のギターに近い。だけど裏板はローズ、側板は合板だけど。側板は音に影響するのか?と。ただしハカ総単板やハカ裏板単板の音ではないが、近い気がする。何か奇妙なL-6。
まあとりあえず来たことを神に感謝する。
 上は普通のL−6、下がハカ側板
なぜそんなことになったのか推測するのも楽しい。
当時ハカ合板側板が張られたモデルは、運の良い極少ない感じがするがL-5かL-5E。しかし前期型ではバリサンドル合板側板のL-5は見たことはない。しかし内張には見たことがある。
ということは前期型の頃、製品管理上L-5とL-6の側板材質の区別は間違いないレベルであった筈だ。しかし極々希にあったのだろうか。
後は単純に、柾目のハカとバリサンドルを間違えてしまった。そんな幸運な職人さんが居た。合板になっても多分ニス塗り以前の工程で、生地のみではハカもバリサンドルも区別は付きづらかった?
次に着色から考えると、L-6の裏板、側板外張りともされていることがあったように思える。勿論材によっては不要な事もあるだろう。前期型の終わり頃にはかなり白っぽいバリサンドルも使われるから、着色されていただろう。しかしこの個体に関しては側板外張りに着色はされていないように見受けられる。塗装するまで気づかなかったか?気付いたときには遅すぎたのだろうか。
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